提箸宏詩集 30/60

ベラ

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ベラ
ぼくは青空を見ている
何年ぶりかで
芝生のうえにあおむけになって
そのあいだに
きみとKは
グラウンドの向こう側の
水呑み場まで行ってしまった
そしてぼくが
青空に感動しているあいだに
世界をひとまわりして
また戻ってきたのだ
「三十歳、ぼくの青春は終わった。」
ガープは言ったが
三十一歳のぼくは
まだぬけぬけと青空なんかに感動している
ベラ
人間になりたくてなれなかった犬
Kがそう言ったとき
ぼくは人間にならない幸せばかりを考えていた
ベラ
あれから何度
水を吞み
世界をまわってきた?
ぼくはまだ
グラウンドにあおむけになって空を見ている
ときおりきみの消えた方向を気に留めなから
少しずつ
少しずつ
雲の出てきた空を

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