提箸宏詩集 30/60
30/60
水際の魚たち
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水際の魚たち
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水際には
魚たちの絶望がある
雨季が終わり
森から戻ってきた魚たちは
中洲の水際で
影を浮かべている
魚影を見ながら
タタリム氏は橋桁に腰かけ
きょうも糸を垂れ
魚たちの絶望を釣ろうとしている
森の中で見た地上の下草
水際の植物
それらを語りながら
吐息を吐いている魚たち
タタリム氏はその理由を知っている
やがて
水鳥が
彼らの絶望を
呑み込み空に運んでいくことも
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