提箸宏詩集 30/60

そこに道がとおるということ

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山が
舌を延ばして
追い迫ってくる。
十五センチの小さな足跡は
東に続いている
馬の蹄と二十五、五センチの足跡に寄り添うように。

百十メートル南に
両膝を曲げ前のめりに倒れた
甲を着た古墳人。
六世紀の榛名二ッ岳火砕流の中から
現代に突然現れたひと。

長さ約十二メートル
幅約三メートル
足跡は当時の道を
山から逃げるように続いている。
その道と交差するように
国道三百五十三号金井バイパスは作られようとしている。
そこに道がとおるということ
発掘、
突然現れた足跡。

その日、
特別なその日
足跡はそこから三メートルの幅で続いているのか
わたしたちの道の下にない未来
そこからわたしたちに道は続いているのか

そこに道がとおるということ
終わったその日から
掘り起こしてしまった時間。

渋川、
金井東裏遺跡
見上げれば榛名。


(注)平成二十四年十一月十九日、公益財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団が金井東裏遺跡で甲着装人骨を発見。
四か月後の平成二十五年三月、南に百十メートル離れた地点から、人の足跡や馬の蹄跡等が発見されました。

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