提箸宏詩集 30/60

探偵のように

  • HOME »
  • 探偵のように

前頁 / 次頁 / 再表示


探偵のように
ぼくらは追いかけている
踏切の向こうに消えた朝の音楽
時間のなかに隠されたトリック
そのなかでうごめくぼくらのありばい

その日、ぼくらの時計は
少しばかり遅れて
ぼくらはそのことにきづかなかったのだろうか
くりかえしぼくらは見失ない
記憶のなかから時間を取り出し
並べ替えてみる

「チャイナタウン」という
古い映画のなかで
探偵はポケットから時計を取り出し
それゆえタイヤの下にしのばせたのだが

探偵のように
ぼくらはいくつも時計を持っている
そしてそれらを記憶のはしばしに
一つずつ置いていくのだ
ぼくらを乗せ、車は
やがて見えなくなるが
タイヤのわだちに残された時計は
くずされたありばいのように
やはり針を落している

前頁 / 次頁 / 再表示

  • Facebook
  • Hatena
  • twitter
  • Google+
PAGETOP
Copyright © 30/60 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.