提箸宏詩集 30/60

こだわり

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足もとから体を洗い始めるひとがいて
ある日
足から洗い始めてみる
そのひとには特に理由があるというわけではなく
洗い始めた私にも特に理由はない
たとえばそのように
なにかを始めたい
なにかを試したい
足から洗い始めた体は
上部にいくに従い
いつものように
手から洗い始めるのや
頭から洗い始めるのとちがって
私の体を逆立てる
そのひとがそれを毎日楽しんでいたとも思えないが
逆立つ気持を
のどもとまで押し上げてみる
そこからなにかが始まるというわけではないが
そこから
なにかを始めたいときがある

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