提箸宏詩集 30/60

ひきだし

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小さなひきだしに、きみは
なんでもかんでも詰め込んでしまう。
古びた写真や明細
パンク修理のゴムと接着剤とともに
真新しい思い出が入れられたばかりだ。
ひきだしをあけたきみは
詰め込まれている多くのものを
押しつけながら
それらを入れる。
だから
再びあけようとして
あけることも
しめることもできなくなってしまった。
きみは茫然としている。
カフカや
ダンテの「神曲」の整然と並んだ
書棚の下の小さなひきだし。
手を差し入れるための
ちょっとした隙間を
これから何十年
探し続けていくのか。

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