土曜日の朝、高崎市立乗附小学校の校庭には、子どもたちが集まってくる。
9時の開始時間、今日はノボル監督が、集合のホイッスルを吹く。
子どもたちが、監督の方に駆け寄るが、それでもブランコのところで遊んでいる4年生が数人、まだ、気づかず、5年生が大声で、名前を呼び気づかせようとしている。
少年サッカーチーム「高崎西FC」は、この乗附小地域を中心として、土曜、日曜の週2日。午前9時から11時30分までの2時間半を練習時間とするクラブチームだ。
9時過ぎにも、ポツポツあらわれる子供もいて、ノボル監督でさえ、スタートは順調にとはいかない。
グラウンドを2周、丸くなって体操。それが終わると、5年以上と4年以下に分かれて、それぞれ担当のコーチがついて別々の練習が始まる。
4年生以下の練習は、まずは、ドリブル。
フットサルサイズのミニゴールがセットされたグラウンドの縦を、各2往復。最初に、「行きが右足のアウトイン、帰りが左足のアウトイン」、次に、「横縦、横は足の裏で撫でるように、そして逆足で縦」、3番目は、「右左でアウト」、「足裏で転がしながら、ときどきアウトで止め・・・」、「アウトで回りながら」、「足裏で内側に持ってくるようにして、アウトで外側に(エラシコ)」、「またいで・・・」。
そして次に、各1往復、浮き球のトラップ。「後ろ向きでボールを投げ上げ、すぐ振り向いてトラップ」、「ボールを投げ上げ、ワンバウンドしたところでトラップ」、「ボールを投げ上げ、落ちてくるところをインステップでトラップ」。
その後、ゴールラインとそれと並行3メートルに線を引き、「その間をアウトで切り返し5往復後、ハーフライン近くまでドリブルダッシュ」、「足裏で切り返し5往復後、ドリブルダッシュ」、これを6回ほど繰り返し、最後に、「向こう側のゴールラインまで、最速ドリブルで2往復」。
ここまでで、45分ぐらいが経過、子どもたちも汗と疲労でぐったりしている。
そして、やっと10分ぐらい休憩。
この後のメニューは、日によって、コーチによって異なるが、10時30分をめどにいくつかのメニューが行われ、その後1時間はミニゲーム。
4年生以下なので、上の学年の大会に出たりしている4年生から、入ったばかりの1、2年生まで。このミニゲームに参加、コーチや父兄も加わってのゲームになる。
こんな状況の中で、中心でゲームに参加する子供ばかりでなくて、ボールに触れることができずに、砂遊びなどを始める子供もいる。と思えば、追いかけっこを始め、泣き声が聞こえたりするということが、日常的に発生する。
こういうことがなく全員が参加できるようにとノボル監督が考えたローカルルールが、「シュートを打って、ボールがゴールに吸い込まれたとき、攻撃側は、ハーフラインより前にいなくてはゴールにならない。」というルールだ。
ゴールが入っても、その瞬間にハーフラインよりも後ろに攻撃側の子どもがいれば、得点は認められずゴールキック。
はじめは、怒っていたシュートを打った子も、このルールが周知徹底されるようになると、様子が変わってきた。遊んでいる子も、味方に怒られるから必死だ。ゴールに向かって、シュートを打とうとする子がいると、自分のゴール近くで遊んでいた子供が、ハーフラインまで駆け上がる。シュートする側も、後ろに残っている子がいると、シュートを遅らせ、後ろから低学年の子供が駆けあがってくるのを待っている。こんな光景が、日常茶飯事になってきた。
ミニゲームが始まる前に、今日はそのルールを適用するかの宣言がある。
このルールを、いつからか子供たちは「ノボルール」と名付けて、ミニゲームの前に確認するようになった。「ノボル監督の作ったルール」ということだろう。
この、高崎の小さな少年サッカーチームは、練習量も少なくそれほど強いチームではない。いや、弱小チームと言っていいかもしれない。でも、子どもたちも練習を楽しみに、週末になるとグラウンドに集まってくる。
そして、待ちに待ったミニゲーム。子どもたちの声が聞こえる。「今日もノボルールでいいんだよね。」と。
ここでは、「きょうもノボルールで」という副題で、自分が指導者の一人として関わっている、この少年サッカーチームの魅力を伝えたいと考えています。